長崎の石橋群と寺町通り


           

  写真は眼鏡橋。1634年に作られた日本最古の石橋とされる。1982年の長崎大水害で多くは流されたが、この橋げたは奇跡的に流失せず、翌年、再建された。

 古書によると江戸時代以前の長崎は、今の県庁通りの小高い岡の半島(長い岬とも呼んだが)以外の低地は海だったという。現在の諏訪神社(馬町電停)付近までが海で、町は今の桜馬場付近の高台が中心だったと書かれている。
 大村藩、領主、大村純忠の娘婿となる第14代長崎仁左衛門景忠が治める長崎領(1500石)は、当時人口1500人の小さな漁村だったとされる。

 1571年、長崎港がポルトガルとの交易港として開港し、発展がはじまる。現在の県庁通りの岬に6町が出来、のち、大村純忠がその地などをイエスズ会に寄進し、長崎は教会が立ち並ぶ、町となる。
 しかし、その後、豊臣秀吉や徳川幕府の禁教令から長崎は激変し、キリシタン弾圧と教会打ち壊し、お寺の建設へと向かう。その間、長崎は外町を含め77町へと発展し、人口も4万を超える大都市となる。

  町はしだいに埋め立てが進み、中島川には、1634年には最初の石橋、めがね橋が完成する。1670年ころの大火で長崎のほぼ全町が焼失した。長崎奉行所の命令で、町は真っすぐな中島川沿いの川端通り2本と、中通、寺町通りができ、ほぼ15本の横に交差する町通りが作られ、石橋はその通りに応じ、そしてその通りの先の寺町、鍛冶屋町にはお寺が作られる。だから、中島川に架かる石橋と寺町地通りのお寺は、すべてつながっているとされる。大火災では金屋町や恵美須町上付近のみが燃え残り、道も家も整備されず、古いまま残り、道が蛇行となった。それはこの火災のためだとされる。そういえば、中郵から上のKTN付近は道が珍しく曲がっていますね。

以下、中島川と近隣の支流ににかかる石橋を下流から順に掲載します。
写真の記事以外の詳細は、下の段の一覧記事表をご覧ください。



 
  大波止橋。中島川の最河口にかかる最初の橋、港をまたぐ橋だ。
 
元、上海航路時代(戦前)にあった鉄道線路あと、出島町。今は駅横から、大波止までの間が元船遊歩道となっているが・・・。 
 
 中央橋。下から5番目、市内のど真ん中の橋。交通の要所。
 
 鉄橋、日本最古の鉄橋だったが、今はコンクリートの人道橋で、長崎人はみんなここをなぜか、「中央橋」と呼ぶ。署名やチラシまきはここだ。
 
思案橋。 有名な橋だが川も橋もなく、川は暗渠だ。小島川にかかる。日本三大「がっかり橋」という声もある。どうですか。橋も川もないのは確かにがっかりですね。しかし、夜は長崎一の繁華街となるのだから、今も昔も酔客にとっては「思案」のしどころでは同じだろう。
 
  嵩福寺、長崎最古の唐寺。地元ではあか寺と呼ぶ。1629年。中国盆が開かれるお寺だ。
 
 袋橋。眼鏡橋のすぐ下流に位置する。眼鏡橋の撮影はここからだ。
 
 皓台寺、寺町にある。眼鏡橋の通りの先になる。
 
 眼鏡橋。日本最古(1634年)の石橋で、82年大水害でも橋脚は残った。
 
  興福寺。長崎三大寺の一つ。唐寺で最古と看板がかかる。1640年ころ。
 
 古町橋。眼鏡橋の上にかかる。
 
 大光寺、鍛冶屋町にある。
 
 東新橋。階段となっている石橋。
 
 浄安寺、浄土宗のお寺。寺町にある。
 
 魚市橋。車が通るコンクリート橋となっている。
 
 一覧橋。全部この付近の橋は、81年の大水害で流出し、新築されて架け替えれているのが多い。
 
 編笠橋。
 
  禅林寺。禅宗のお寺。寺町。今は寺の横通りが、亀山社中への登り口で、竜馬通りと呼ばれる。150年ほど前、竜馬がこのお寺の横を走りまわっていたのだと思うと、歴史を感じる。
 
 光永寺、唯一川沿いに作られたお寺。福沢諭吉が2年ほど住居としたことで有名だ。古町にある。明治維新のころ、長崎県議会がここで最初に開かれた。
 
 大井手橋。81年大水害で架け替えとなった。
 
 桃渓橋、中島川に合流する西山川に最初にかかる。周りの景色も併せて、石橋の中でも一番風情のある橋だと思うが。伊勢町〜出来大工町。
 
 橋と寺を示す一覧の掲示陶器板。眼鏡橋付近にある。
 
 中島橋。中島川にかかる同名の橋、伊良林小学校の前にかかる小さな橋。誰もそんな名前の橋など知らない橋だ。
 
 光源寺。伊良林にある。飴買いの幽霊で有名なお寺だ。寺町通りから外れる最後のお寺だ。亀山社中の登り口付近となる。
 
 中川橋。中島川の支流に架かる橋で、江戸期は長崎街頭では2番目の橋と呼ばれた。夫婦川町と中川町にある。
 
 鎮西橋。国道34号線の電車道にかかる。馬町交差点で、江戸期は長崎街道の起点となった。
 
 一の瀬橋。蛍茶屋にかかる。昔はここにあった茶屋で一休みし、旅行く人を見送った。長崎街道の最初の休みどころで、ここから日見峠を越え、小倉までの旅立ちの場所だ。
 
 蛍茶屋電停。電車も終点で、車庫になる。一の瀬橋のたもとだ。
 
 中島川の最上流に架かる石橋。名前はないが、国道旧34号線の日見トンネル西口のすぐそばになる。
 
 2005年に完成した女神大橋。神の島の方(外海)からみている。この橋で、長崎港が一周できるようになった。
 
 
長崎の橋  記事
  長崎の街にかかる石橋の大半は中島川(全長約3キロ)にかかる。自動車時代になり、次第にコンクリート橋に作り替えられていくが、今なお、人だけが渡る橋の人道石橋がこの付近には残る。400年近くの歴史ある橋が多い。
橋の名前 長崎の橋を中島川の河口から順に上流へ訪ねます。
1 大波止橋 中島側の河口の一番海側,下流にかかり、大波止出島をつなぐ。大波止桟橋のすぐそば。
2 玉江橋 国道499号線にかかる電車通り。大波止と出島をつなぐ、中島川の最大の橋。
3 出島橋 旧「出島」と江戸町(県庁)を結ぶ橋。鉄橋。鉄橋としては現存する最古の橋とされるが?
4 長久橋 県庁坂を下る長久坂から築町を結び、野母崎方面へのバス路線が通る。
5 中央橋 築町〜浜町を結ぶ長崎一の幹線道路。茂木方面へ通じる。
6 鉄橋 築町〜浜町アーケードを結ぶ、通称「中央橋」と呼ばれる人のみの歩道橋。人が渡ることで一番通行量が多い橋。署名とかチラシまきはここで行われる。以前はここが国道だったというが。
7 万橋 賑町と万屋町を結ぶ。中央橋のすぐそばだが、人も車も通行量は少ない。
8 賑橋 賑町のバス通りと古川町をつなぐ。
9 常盤橋 賑町・親和銀行と古川町・商店街をつなぐ。この先に寺町が始まり、大音寺、崇福寺などへ通じる。
10 袋橋 栄町と銀屋町をつなぐ。石橋群の始まり。人道石橋。
11 眼鏡橋 魚町と諏訪町(旧磨屋町)をつなぐ。長崎一有名な石橋。築400年を超える橋で、82年の大水害でも土台は残った。この先に寺町の皓台寺がある。人道の石橋。
12 魚市橋 魚町と諏訪町をつなぐ。寺町の長照寺へ向かう道だ。
13 東新橋 魚町と諏訪町(旧新橋町)をつなぐ。寺町の延命寺に向かう。人道の石橋。
14 すすき原橋 魚町(市民会館)と麹屋町、紺屋町とを結ぶ。長崎立山奉行所と寺町を結ぶ橋の一つ。唯一、中通の道と直進しない道だ。長崎三大寺の一つ、興福寺につながる。
15 一覧橋 古町(光永寺)と麹屋をつなぐ。寺町の浄安寺に向かう。
16 古町橋 古町と麹屋町をつなぐ。この道は唯一寺町通りとつながっていない。人道の石橋。
17 編笠橋 今博多町と八幡町をつなぐ。三宝寺に向かう。人道の石橋。
18 大井手橋 大井手町と八幡町をつなぐ。深嵩寺へ向かう。この寺のわきに、亀山社中に上る竜馬の道がある。
19 桃渓橋 出来大工と伊勢町を結ぶ。中島川と西山川が合流する、すくそばの石橋。風情は眼鏡橋よりも、当時をしのばせる、いい橋だ。
 20  鎮西橋  馬町交差点の国道34号線にある。諏訪神社前の新大工町の長崎街道始まりの地点となる。
21 高麗橋 伊勢町・伊勢神社と八幡町をつなぐ。寺町通りの最後のお寺、禅林寺へ向かう。銅座と浜町を分ける大通りから始まる中通、川端通り、寺町通りの最終地点で全部で15条の交差道=横道があり、15の町があった江戸のころ、。旧長崎の市街と新長崎の街を分ける橋でもある。
22 阿弥陀橋 伊勢町と八幡町をつなぐ。
23 銭屋橋 伊勢町と伊良林をつなぐ。伊良林の光源寺へ向かう。江戸期の古地図にはない。
24 紅葉橋 新大工と伊良林をつなぐ。古地図にない明治期の橋だろう。
25 中島橋 桜馬場と伊良林小学校とをつなぐ。中島川の中島橋だが、今は石橋ではない。
26 中の橋 桜馬場と伊衣良林をつなぐ国道34号線の電車通り。
27 八幡橋 中川町と新中川町を結ぶ橋。現在も料亭橋本などがある風情ある橋だ。
28 さくら橋 新中川町にかかる橋で、明治期は桜の名所だったという。今も両岸に桜が咲く。
29 一の瀬橋 中川町。蛍茶屋にある。本河内ダムが作られて以降、中島川の最上流の橋となる。昔の人は、この橋が長崎の別れの地点であり、旅立つ人をここで見送った。
30 中川橋  2番目の橋と呼ばれた。シーボルト通りにある。中川町と夫婦川町にかかる。
その他の橋
31 女神大橋 2005年にかかった長崎港入口の大橋。女神と対岸の神崎鼻をつなぐ。高さ64メートル、長さ1,4キロのつり橋。
32 旭大橋 81年に作られた、浦上川河口の大橋。三菱造船所の対岸への道となる。
33 稲佐橋 昔は対岸とつなぐ橋の唯一の橋だった。1970年ころまでは人は渡し船で対岸へ渡った。
34 大橋 大橋町にある。1945年の原爆被爆での崩壊を象徴する大橋だ。現在長崎には大橋が3つあるが、80年代までは文字通り「大橋」だった。
35 無名 中島川源流(英彦山)の石橋群。国道34号線沿いの日見トンネル西口にある小さい石橋。